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今市隆二 最新曲「辛」について考えてみる

 

 

今市隆二って誰ですか?というそもそも論

 

このブログを読んで 今市隆二 という人物を知っている方はどれだけいるだろうか?もしかしたらピンと来ない人もいるかもしれない。(知らなかったらこんな記事見ないだろうか…)では、三代目 J Soul Brothersというグループはどうだろうか? 名前だけなら知っているという方もいるだろう。そう、今市隆二とは先に挙げた三代目 J Soul Brothersのボーカルなのだ。世間的には「R.Y.U.S.E.I.」でのランニングマンや「Rat -tat-tat」のダンスが馴染み深いと思うが、筆者としてはノリノリの曲よりもしっとりと落ち着いた曲にこそ、このグループの真髄が表れていると考えている。そしてそれはボーカリストのソロ活動にも例外なく、今市隆二個人の名義でリリースされた曲にも上質なしっとり曲が数多くある。しかし、その全てをここで語ることは難しい。そこで今回は最新曲「辛」に焦点を絞り、筆者の感想や考察を述べられたらと思う。

 

 



「辛」を紐解いてみる

 

「辛」は5/13に配信シングルとしてリリースされた楽曲である。細かい御託を述べる前に、まずはYouTube上で公開されているMVと共に曲のもつ雰囲気を簡単にでも味わっていただきたい。

 

 

RYUJI IMAICHI - 辛(Official Music Video) - YouTube

 

 

如何だっただろうか?シティポップの曲調に、サビはキャッチーな言葉がリフレインして鼻歌でも口ずさみやすい。また、ボーカルもハイトーンが気持ちよく響いて、今市氏の10年以上のキャリアで磨かれたスキルがこれでもか!凝縮されている。イントロから、聴いていて心地良い1曲になっていると筆者は感じる。

一聴すると恋人同士のラブソングのようにも感じられる歌だが、果たして本当にそうだろうか?

 

今回リリースされた曲「辛」について今市氏はこのように答えている。

 

ーー13日に配信リリースされた新曲『辛』について教えてください。

大きなテーマといいますか、曲のメッセージとしては、悲しみとか喪失感です。SNSの登場で世の中すごく便利になりましたけど、その反面、誹謗中傷で苦しまれたりといったことがニュースにもなったりして、便利なだけじゃない部分も多いです。そういった現代社会が抱えている問題、そして本当に戦争が起きてしまっていることだったり、悲しみを感じている人がたくさんいらしゃいます。そういうなかで、ちょっとでもみなさんに寄り添えたら、そんな思いで作った曲です。

引用元:https://screenonline.jp/SCREEN_Plus/17540574

 

筆者はこのインタビューを見て、曲に対する見方が大きく変わっていった。歌詞を詳細に見てみると、キャッチーでラブラブなだけでない部分がはっきりと浮かび、それが上記の記事で今市氏が語った内容なのでは?と考えることができた。

 

以下にこの曲に対する考察を記していくが、筆者による妄想も多分に盛り込まれているので、その点は御容赦いただきたい。

 

 

「辛」という楽曲には中盤に大きな転換点が存在する。

ここに歌詞の全文を載せることはできないが、1番から順に聴くとサビで何となく違和感を感じる。Aメロからおそらく恋人同士である二人の甘い日々を切り取った歌詞が流れていき、そのままラブラブな内容で行くと思いきや、MVの1分21秒以降からは一転して、恋人からの電話をとれなかったことを後悔しているようなニュアンスが汲み取れる。この場面で不穏なのが歌詞の「ラストコール」という部分だ。失恋により二人の関係が終わったことを暗に示しているのだろうか。それにしてはサビのある部分が引っかかってしまうのだが…

 

違和感を抱えながらも曲を聴き進める。2番のAメロからも甘々な二人の日々が描写されているが、この後で感じていた違和感があることへの決定的な確信となるのである。それはMVの3分06秒部分からである。

髪色変えて
秋色映えてる
木漏れ日の中
落ち葉と共に
ゆらゆらゆら踊る
季節がここで止まる

 

・「辛」

作詞:RYUJI IMAICHI・Chaki Zulu・JAY'ED

 

最後の「季節がここで止まる」で一瞬無音になるのである。楽曲単体ではMV程長くはないがそれでも音が消える演出は共通している。1番では季節は移りかわり、そのまま曲は進行していたが、2番では季節が止まり音も消えている。これが意味することは何だろうと考えると、この曲における「君」と呼ばれる(おそらくは)恋人が亡くなってしまったのではないか?という答えが頭に浮かんでしまう。それも自分で死を選択してである。このことを念頭に置くと、サビの歌詞にも納得がいくのである。恋人を救えなかったことの後悔から、手遅れになる前にサインを送って欲しかったことや、気づけなくて申し訳ないという感情を吐露している。そんな情景が浮かんでくる。そして、極めつけは大サビ前の部分

どうしてどうして
あのときに戻れたら
大丈夫だって手を掴み
強く抱き寄せるよ

 

・「辛」

作詞:RYUJI IMAICHI・Chaki Zulu・JAY'ED

 

手遅れになる前に、自分にもできたことがあるはず。もしあの時に戻ることができたら、恋人を救うことができたかもしれない。いや、救ってみせるという強い決意が滲み出ているが、現実に過去に戻ることは不可能である。結果としては恋人を喪ったという事実だけが残ってしまう。なので以降の歌詞も後悔をし続けたままというまさに辛いと言わざるを得ない展開になっている。ここでサビの歌詞を繰り返すことで、より無常感が強調し、「ごめん」の連続で喪失感を最後まで残しエンディングを迎える。残酷であるが、同時に美しさも感じる1曲である。

 

「辛」リリースの意図は?

では、明らかにバッドエンドなこの曲をリリースしたのは何故だろうか?それはやはり、現代社会において、我々自身が不安や生きづらさを抱えて生活しているからであろう。世界規模の感染症により我々の生活は大きく変化した。それによるストレスや失職のリスクは多分に存在する。また、今市氏が語るようにSNS等の誹謗中傷も顕在化しており、そのために自らの命を絶つという陰惨な事態も起きている。それ以外にも人間関係や仕事、学校等、挙げていけばキリがない事に、年代や性別問わず一人ひとりが繊細なバランスを保ちながら耐えている。しかし、そのバランスが一度でも崩れてしまうと…。そんな社会問題に対して、ボーカリストにできることは歌で寄り添うことではないだろうか。「辛」の歌詞は救いのないものであるが、だからこそ相手を救うという大サビ前の決意を表した部分が映えるのである。この曲で最も伝えたいメッセージとはこの部分なのだと筆者は考える。悲惨なこともある世の中だが、それでも生きていく人たちへ、声の力で寄り添っていく。そんな意図を感じてならない。この曲を通して、不安や心配事を抱える人たちが、少しでも安らぐことができたらと願う。

 

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